平安鬼姫草子―神ながら神さびせすと (電撃文庫) 感想

◎ まるで少女漫画のような雰囲気

時は平安、所は京。鬼の血を継ぐ少女と、その兄である若き陰陽師の物語。
 “姫殺し”と呼ばれる『怪異』が起こる京の都。希代の陰陽師・安倍晴明がその原因を探る中、若く未熟な陰陽師の少年・坂上鈴城は、左近衛府に所属する少年・源頼親を誘い、独自に『怪異』捜査を始める。二人が無謀な行動に出たその裏には、鈴城の従姉妹、鬼の血を受け継ぐ少女・結鹿の嫌疑を晴らしたいという想いがあった。果たして、『怪異』"姫殺し"には、妖と人間が織りなす『愛』が深く関わっていて……。切ない陰陽奇譚、登場。

 いわゆる「歴史物」と言われるジャンルの本です。
 ライトノベルでは日本の歴史物は少ないですね。何故なんでしょう。やはり、読者側が中途半端に歴史を知っていて、なおかつ中途半端に言葉が分かっていて、作者にしたらそれなりの知識が要求され、まさに「狙いが定まらない」。それならば、いっそ架空の国のファンタジー設定で堂々と現代日本語が使え、設定も好き勝手に書ける…という方が楽ですよね。
 歴史物を堂々と書けるほどの実力があれば、一般文芸で書いている様な気もします。

 でも、ウチのビール犬に言わせれば、江戸時代モノの文芸書なんて「中高年向けのライトノベルのようなもの」「テレビ時代劇の活字版のようなもの」だそうですが…。


 前置きはここまでにして。

 本作に漂う雰囲気は、時代背景が平安時代…ということだけではなく、ちょっと変わった雰囲気です。
 では何が原因かというと、「とにかく美少年(美丈夫)大量出演」です。名前は、日本史や古典文芸のどこかで見た名前ばかりですが、とにかく美少年だらけでおまけに異能の人たちです。そう、まるで少女漫画の雰囲気。まず、この雰囲気がダメな人はダメでしょう。
 また、安倍晴明は美女、おまけにその美少年達に「母上」と言われているという、これまた少女漫画風びっくり設定です。
 また、よくあるラブコメラノベのような「男<女ハーレム」ではなく、「男>女の逆ハーレム」っぽいです。だって、多かれ少なかれみんな鬼の血を継ぐ少女=結鹿に気がある。そう、モテモテ。


 全体的には、平安時代という背景の「説明」に忙しくて、あまり登場人物の個性が出ていません。
 作者さん的に、ここまで説明口調であるということは読者に理解してもらえないと思っている証拠。そう思わせる読者側の歴史認識が浅いのは事実で、日本史が必修でなくなったのがこういう所に影響していると思われます。江戸の風俗が想像できなくて「古典落語」が理解できない若者と根っこは同じです。
 日本人として、もう少し我が国の歴史や文化史を理解するべきじゃないかと思うのですがどうですかね。そうすれば、この物語ももっとスッキリ書けたのではないかと推測しています。(作家さんの実力云々は置いておいてですが。)
 逆に、一般的な読みやすさから言えば、敢えて当時の用語を大量に使わなくてもよかったのかもしれません。あと、いきなり大量の主要登場人物で、余計に難しさを加速させているような気もします。

 ただ、上記を差し引いても、登場人物の個性が薄く感じたので感情移入が難しかったのは事実です。謎の人が多いのも一因ですが、とにかく美少年(美丈夫)だらけの世界にどうやって感情移入しろというのか、このオッサンに。(苦笑)
 それと、結鹿の可愛さ・愛おしさの本質について、登場人物達は「知っていて好き(愛している)」のだけれども、その中身が読者に伝わってこないのがもどかしい。要するに「義兄妹としての好き」と「異性としての好き」の違いなど。個体的に可愛い・綺麗なのはビジュアルで分かるのだが、登場人物達は単にビジュアルに惹かれているのか?いろんな好きがあって良いのだけれども、読み物としては数が多いとややこしいです。
 無理に詰め込みすぎず、当面の結鹿LOVEは鈴城と頼親だけで十分だったのではないかと思います。

 同じく、1冊に詰め込みすぎたことによって、本筋で(テーマとして)書きたかったことは何なのかが分散してしまったきらいがあります。「姫殺し」のことなのか、義兄弟(兄妹)のことなのか、はたまた結鹿と鈴城の「ほのかな恋」ことなのかetc…。
 もう少しテーマを絞った方が面白かったような気がします。

 まあ、何だかんだ言っても、これまでのものとは多少異質な作品なので、もうしばらく追っかけていきたいと思います。(続巻が出ればの話ですが…)

 さて、評価は難しいのですが、私個人は日本史が好きですし、題材としては面白いと思ったので、今後に期待の★4つです。


平安鬼姫草子―神ながら神さびせすと (電撃文庫 く 7-1)
アスキー・メディアワークス
黒狐 尾花

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